トランプ大統領の1兆ドルインフラ投資計画、その進捗は黄信号?


2016年11月、世界中の多くの人の予測を裏切ってアメリカの大統領選ではドナルド・トランプ氏が、第45代アメリカ合衆国大統領の座に選ばれました。
選挙戦を通して、また、それまでのメディア出演歴の中での過激な言動への不安や、大方の予測がヒラリー氏の勝利だったこともあって市場も混乱し、選挙結果が開票された日本時間11月10日には、日経平均が一時1000円以上も下がります。しかし、トランプ氏の経済政策、通称トランポノミクスと呼ばれる大幅減税やインフラへの大規模投資などが市場に評価され、翌11日には相場も大きく回復し、その後の2016年末までの好市場の始まりとなりました。

政治的にはともかく、金融市場には初期的には好意的なムードで始まったトランプ政権ですが、1月20日の大統領正式就任以降100日以上が経過し、徐々に吹聴されてきた経済政策の実現性に疑問符がつき始めています。総じてアメリカのメディアはトランプ氏に対する嫌感情が強いため、そうした点は割り引いて見る必要がありますが、日経平均も好況が続いているだけに、不安材料にもきちんと目を向けた方が良いでしょう。

2017年の市場はトランプ政権の行方も大きく作用しています。
今回の記事は、News Week誌 2017/6/6号、 p48〜p51「トランプは崩壊インフラを救えるか」より、トランプ氏に期待されていたインフラ政策の遅れへの懸念についての記事の内容を参考に、みていきたいと思います。

インフラ政策への期待

2016年末から2017年5月にかけての好相場を支えたのは、トランポノミクスへの期待と言っても良いでしょう。その結果米市場の好況が続き、引きずられる形で日本市場も好調でした。

参考:トランプ大統領の経済政策、トランプノミクスの楽観論と悲観論

トランポノミクスの具体的な内容は法人税や所得税を対象とした大幅減税と、10年間で1兆ドル規模のという大規模な公共投資、そしてエネルギー政策などを中心とした規制緩和です。このうちインフラ投資に関しては、将来の経済発展の礎となるような新しいインフラの敷設もさることながら、老朽化したインフラの修繕も重要なテーマとなります。
これは米国に限らず日本や欧州各国も似たような問題を抱えていますが、現在、先進各国は第二次大戦後に戦後復興と合わせて大きく作られた社会インフラの、物理的な更新時期にきています。そのため道路やトンネル、橋などの老朽化による事故が各国で増加しており、早急な対策が必要とされています。

しかし残念ながら、トランプ氏の当選直後は大きなインフラ事業の誕生に期待し色めきだっていた米国公共インフラ関連の事業家やロビイスト、それに役人や銀行家や法律家の人達は、最近めっきり元気をなくしています。大統領就任から4ヶ月以上経ってるにもかかわらず、インフラ投資に関して具体的な話が全く出てきていないからです。

難しい現代のインフラ開発

トランプ政権のインフラ事業が進まない理由の1つは自縄自縛と言えるかもしれません。トランプ政権で商務長官に就任した投資家のウィルバー・ロスや、国家通商会議を率いる経済学者のピーター・ナバロは、大統領選挙期間中、インフラ重視を訴えたヒラリー陣営を批判し、減税を通して民間企業のインフラ投資を後押しするべきだという意見を述べてきました。

トランプ政権は減税も掲げていますが、そのためには支出削減も必要なため政府出資によるインフラ投資は確かに難しいのかもしれません。そして民間企業によるインフラ投資も一部では現実的な選択肢と言えます。例えば富裕層が多いワシントン郊外のようなエリアでは、渋滞を避けられる高速有料道路を敷設すれば、料金を支払って利用する層も多く見込まれ、十分収益性を担保できるからです。
一方で、地方の州や経済的に貧しいエリアの老朽化した道路やダムなどの補修の必要を抱えるインフラは多数ありますが、こうしたインフラの修繕では費用の回収見通しが立たないため、民間が自発的に取り組む可能性は低いとも言われています。

理想的なインフラ投資の流れとは?

歴史的にアメリカはずっと公共事業や政府支出を嫌ってきた国というわけではありません。むしろ国家規模での積極的な投資やインフラ事業で発展してきた国とも言えます。

初代財務長官のアレグザンダー・ハミルトンは資金を借りて精力的に道路や湾口の建造を進めていきました。そうした思想や政策は多くの政治家に受け継がれていき、19世紀半場にエイブラハム・リンカーン大統領による大陸横断鉄道の敷設や、20世紀半場に行われたドワイド・アイゼンハワー大統領による州間高速自動車網の建設などが特に有名です。前者はアメリカの西海岸をはじめとした西部開拓を大きく進めましたし、後者は車の普及とそのことによる郊外住宅地の発展という現代アメリカ生活のベースを築いたのです。

老朽化したインフラの修繕は、上記のような投資的側面が強いインフラ事業とは異なるかもしれません。しかし、建設・不動産業界で財を成し大統領まで成り上がったトランプ氏には、その資質を発揮しこの問題を解決していくことが求められています。


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