2018年以降の税制改正における相続関連の重要テーマ


2017年11月22日、与党自民党の税制調査会は総会を開催し、2018年の税制改正に関する本格的な議論をスタートさせました。
議論開始というとこれから始まっていくような印象を受けますが、2018年の税制改正に向けて各省庁からの要望は出揃っており、財務省を中心として議論が進んでいる可能性が高く、現在漏れ伝わって来ている内容やテーマが税制改正大綱となる可能性が高いです。

今回の記事ではそもそも日本の税制はどのように日々決まっていくのかや、2018年の改正内容について見ていきましょう。

税制改正のあらまし

憲法にも国会は「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」と定められている通り、税制を含めた法律は国会の審議と議決を経て実現されることになります。しかし税制案や各法案を国会議員が独自に編成・立案するというのは現実的にではありません。そのため実際は各種諮問機関の運営などを通して官僚機構が主体となって、あるいは与党(自民党)内の審議機関が官僚らの協力を仰ぐ形で法案などを作成することとなります。

毎年の税制改正もこの形式に沿っており、まずは内閣総理大臣の諮問機関である政府税制調査会(政府税調)が各省庁から税制変更への要望を吸い上げ、その内容を大枠の方針としてまとめます。そして次に与党=自民党内の税制調査会(自民税調)が具体的な税率などを定め、それを税制改正大綱としてまとめ国会の審議・決議にかけます。
国会の審議にて野党側から税制改正大綱への答弁が行われますが、与党が議席の安定多数を維持している現在のような状況では、改正大綱はそのまま通る可能性が高いといえるでしょう。
(なお、政府税制調査会の会長はほとんどが大学教授などの民間人ですが、運営の事務は財務省が取り仕切っており、実質は財務省を中心とした官僚機構の一部と言えます。)

スケジュール的には税制改正は毎年11月ごろまで十数回の政府税調の審議が重ねられ、その後、11月〜12月の自民税調の総会などを経て翌年の税制改正大綱がまとめられる流れとなります。

20世紀にわたり自民税調の権限は大きく、税制に限っては時に自民党総裁(=内閣総理大臣)以上の権限があるとまで言われ、当時の大蔵省(現財務省)とやり合う存在でした。税制の変更はそれが減税であれば国民から歓迎されますが、どれだけ道理が通っていようとも増税は歓迎され辛く、国会議員は選挙のこともあるため税調の役職が”長老”と呼ばれるような有力議員(強力な地盤を有し選挙の憂いが少ない)によって固められていたからです。
しかし、2001年以降の小泉元首相による自民党改革や民主党との政権交代、また有力議員の引退を経て自民税調の在り方も大きく変化しており、近年は良くも悪くも官邸主導色が強いと言われています。

2018年税制改正のテーマ

現在(11月29日時点)の段階では、まだ2018年税制改正大綱は定められていません。しかし政府税調での議論はあらかた尽くされ、自民税調の総会も始まっています。そうした内容から2018年税制改正の中でも主に相続に関連するテーマを見ていきましょう。
これらのテーマは必ずしも2018年に国会のでの審議・議決を経るとは限りませんが、近年のうちに実現する可能性が高いテーマです。

一般社団法人の課税逃れの抑制

現在、一般社団法人を活用した相続税の節税(租税回避)スキームの濫用が問題視されています。
財産を相続や贈与によってある個人から別の個人へ移そうとした場合、相続税や贈与税の課税対象となってしまいます。しかし一度財産の所有権を社団法人に移し、その社団法人の子供や孫などに理事という役職を引き継がせる形にすれば社団法人に財産を移して以降の課税はないと考えられています(社団法人に移す時だけは課税対象となります)。

こうした社団法人、あるいは財団法人を活用した相続税の租税回避は伝統的な方法とも言え、明治から昭和にかけての財閥創始者や旧華族などの大富豪一族が財団などを多く作ってきたと言われています。ただそうした行為は社会全体としては細々と行われており、大きな問題にはなりませんでした(特に旧華族系などは一種の”おめこぼし”もあったと思われます)。
しかし近年の相続税の課税強化や社団法人の設立簡素化などを背景に、社団法人を活用した相続対策が非常に大きく喧伝されるようになってしまい、租税の公平性維持の観点から問題視されていました(2016年の社団法人の設立件数は6075件と5年で1.5倍に増加)。
そのため、財務省は親族が代表者を継いだ場合に非課税の対象から外すなどして節税の拡大を防ぐことを検討しています。

小規模宅地の特例を用いた節税の抑制

居住用小規模宅地の特例は、趣旨としては被相続人が住んでいた住居を相続人も使い続ける前提で、相続税の課税時に宅地の評価額を8割減するものです。
ただ現在の同制度では親(被相続人)と子(相続人)が同居していなくとも、被相続人が一人暮らしであり、宅地等を取得した相続人である親族が相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有に係る家屋に居住した事がない(子に持ち家がない)ことなどを要件として、居住用小規模宅地の特例の適用を受けられ。「家なき子特例」と呼ばれています。このことを悪用し、例えばその建物部分のみを子の子(被相続人の孫)に贈与してしまって”家なき子”となり、子が実質的には自分の家を持っているのに、居住用小規模宅地の特例の適用を受けるといった、特例を悪用するケースが散見されています。

このため財務省は、相続時に子がもともと所有していた家に居住している場合や、子が3親等以内の親族が所有する家に居住している場合などは対象外にすることなどを検討しています。

事業承継おける納税猶予の対象となる株券の拡大

中小企業の事業承継を円滑化するため、現在社員の雇用要件などを維持する条件で非上場企業の後継者が先代からその株式を引き継ぐ場合、全体の3分の2に当たる株式に対しては納税が80%猶予される制度があります。
そしてこの対象となる株式の範囲が3分の2ではなく、全株式になることが検討されています。

死亡保険金の相続税非課税限度額の引上げ

死亡保険金に対して、現在法定相続人の人数×500万円の非課税枠がもうけられています。
現行の非課税枠に対して。更に「配偶者及び未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算することが検討されています。

信託受益権の質的分割の促進

信託では受益権が設定されると、その受益権が相続税や贈与税の課税対象となります。しかし、受益権が質的に分割された場合の課税関係に関しては税法上明確になっておらず、その曖昧さが信託の活用促進を阻んでいるという指摘がありました。
信託受益権を元本受益権と収益受益権に分離し、信託の設計によっては元本受益権の評価が著しく小さくすることにより、贈与税を回避しながら資産移転を出来る租税回避的なスキームとしても活用されることも見受けられていました。
こうした状況を解決するために、新たな税法の規定導入が検討されています。

上場株式等の相続税評価に関する見直し

現在相続財産となった上場株式等は、原則として相続時点の時価で評価されています。ただ上場株式は債権や現預金などのその他の資産に比較して、相続発生後、財産を相続人が処分できる遺産分割までの間に下落するリスクが高く、高齢者が資産運用において株式を選択する抑制要因になってしまっているという指摘がありました。
こうした状況を解消し、投資家の資産選択を歪めないような上場株式等の相続税評価の見直しが検討されています。

また、22年超経過の中古の木造の建物は中古資産の耐用年数ルールに基づき4年償却が出来ることから、中古・木造の米国不動産への投資を所得税対策として行われていることが平成27年度の会計検査院検査で指摘がされており、2018年度税制改正でなくても数年内に何らかの税制改正が入るのではないかという観測もあります。
このように、節税と租税回避の中間のような税金対策を主眼とした行為は、広く知られるにつれ、税制の網で制限が入ったりグレーゾーンが明確にNGになることがほとんどですので、長期的なタックスプランニングを考える際には十分な注意が必要です。

以上、2018年以降の税制改正における相続関連の重要テーマをお届けしました。進捗があり次第続報をお届けしたいと思います。

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