【事業承継税制の適用拡大】2018年税制改正における相続税関連の変更③


ものづくりを得意とする日本経済は、中小企業の技術力に支えられています。1900年代を支えてきた中小企業経営者は高齢化しており、次の世代への代替わり=事業承継が求められていえるでしょう。しかし後継者の不足や、株式の親族への移転によって発生する相続税や贈与税がネックになって、事業承継が思うように進められていない企業はたくさんあります。

経済産業省の試算では、中小企業の事業承継の不振が現状のまま続いた場合、そうした企業の廃業や経営不振などが原因で、2025年頃までに約650万人の雇用が失われ、約22兆円のGDPが失われる恐れがあるとしています。このままでは、そうした悲惨な未来が現実のものとなってしまいかねません。

こうした事態を避けるさけるため、経済産業省が中心になって中小企業のオーナーが、所有する企業の非上場株式を後継者に贈与・相続する場合に、納税が免除・猶予される制度(事業承継税制)が設けられています。そして今回の税制改正にて当該制度がより使いやすくなるようにと制度の改正が行われました。
その改正内容を見ていきましょう。

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事業承継税制とは?(これまで)

今回の変更内容について理解を深めるため、まずは現行の事業承継税制について概要を把握しましょう。

事業承継税制(納税猶予制度)は、平成20年5月に成立した経営承継円滑化法において設立された制度になります。会社の代表権を有していた先代の経営者の非上場株式を、後継者に贈与・相続する際にその課税が猶予・免除されるという概要です。
先代経営者がその後継者に株式の贈与を行った際に、当該企業の発行済議決権株式の3分の2までに関する贈与に関しては、先代経営者の死亡日まで、贈与税の納税が100%猶予されていました。そして、先代の経営者が亡くなった時には、猶予されていた贈与税の課税は免除され、その代わりに贈与した分の株式に対する相続税の課税が発生します。しかしその相続税も、以下の相続税の納税猶予のための要件を満たせば、発行済議決権株式の3分の2の部分までに関しては、課税価格の80%が次の事業承継まで課税が猶予されます。

相続税が納税猶予されるための要件
・相続後5年間、平均で構わないので雇用の8割を維持する
・相続後5年間は後継者が代表から退任しない
・次の事業承継まで、他者に株式を譲渡しない

など(上記要件を満たせない場合は、納税を猶予されている贈与税・相続税を利子税と合わせて納付しなければならない。)

芳しくない制度の利用状況

現時点では、事業承継税制の利用状況は芳しくありません。制度が施行されてから平成28年9月末までの段階で、制度の認定は相続で959件、贈与で626件程度です。

(参考)事業承継に関する現状と課題について – 経済産業省

現在の制度では使いづらさが残るという指摘が存在しており、こうした現状に対応しより制度をの利用を促進するために今回の改正が行われました。

2018年税制改正での変更点

2018年度税制改正による変更点は以下となります。

入り口要件の抜本緩和

制度がより魅力的で使いやすくなるよう、以下のような変更が行われました。
・今まで発行済み株式の3分の2までが対象だったものが、全株式が対象へ
・80%だった相続税の猶予割合が、100%へ
・承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要だったものが、必須ではなくなる(ただし、雇用を満たせなくなった理由の説明書の提出が必要)

この制度を用いれば、経営する非上場企業の株式の承継には税金がかからなくなるという内容です。財務省・経産省ともに、この分野では相続・贈与税収入よりも、経営継続による法人税や所得税などの方がずっと大事なのだというメッセージとも読み取れます。

承継後の負担軽減

・これまでは制度を利用した後に、後継者が会社売却を行った場合、制度を利用した時点の株価で税計算が行われ納税義務が発生していたのが、会社売却を行う時点の株価で税計算を再計算する形に変更(承継後に経営不振によって売却するというような場合のリスク軽減)

承継パターンの拡大

・先代経営者から贈与・相続された非上場株式以外に、他の株主から贈与相続された非上場株式にも制度の適用が可能に
・また後継者も1人に限定だったのが3人の代表まで認められるようになる

以上、平成30年度(2018年)税制改正における事業承継税制に関する変更のまとめをお届けしました。事業承継税制の適用には優秀な税理士など専門家の協力が必要不可欠ですが、経験が豊富で相性の合う専門家を見つけることが重要です。
そうした専門家探しにお困りの場合は、相続tokyoにぜひご相談ください。

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