債権者を保護する規定(2018年相続法制改正⑦)


2018年に行われた相続法制の改正の中には、被相続人の債権者を保護する規定も含まれています。これまでの相続では、遺産の中で正の相続財産と負の相続財産のうち、正の相続財産の方が多いにもかかわらず、遺言の内容によって債権の回収が阻まれるということがありました。そうした面を解消するための改正と言えます。
具体的な内容を見ていきましょう。

遺言よりも登記が優先

債権者の保護に関する1つ目の変更は、遺言の内容よりも登記が優先されることになったことです。

例えば、所有財産が評価額5000万円の自宅と2000万円の債務(借金)という男性がいて、その家族が妻と子供1人だった場合、その男性が無くなると債務は法定相続分通りに分割され、妻が1000万円、子が1000万円相続する形になります。そしてここまでであれば、仮に妻にも子にも返済の資力が無かったとしても、自宅を売却すれば返済は可能です。
しかし男性が遺言によって自宅を子に残した場合、子には返済が可能ですが妻には返済余力がなく、債権が回収不能となって焦げ付いてしまうのです。

債権者には遺言を知り得る方法が無いため、上記のような不利な状況に置かれていました。
しかし、今回の法改正によて債権者が被相続人が亡くなる前に、自宅など担保となりそうなものに差し押さえる登記を行えば、子に自宅を遺贈するという遺言の内容は無効となり、妻と子それぞれに支払い余力が生まれるため、債権の回収が可能になります。

売却の場合でも登記が優先

なお上記とは別に、例えば共同相続人がA・Bの2名存在し、被相続人がAに財産を遺贈する遺言を残していたとします。その際に、もしBが不動産などの相続財産のうち、自己の法定相続分を第三者に売却していた場合、Aは不動産などを登記しなくとも、その権利が保護されていました。
しかし、これは遺言の内容を知りえない第三者が不利であるとして、改正後はAと第三者との優劣は登記で決することになります。

これまで相続不動産の登記はいいかげんい済まされることも多かったのですが、変更がある場合はマメに登記を行う必要があると言えるでしょう。

債務の承継は法定相続分通りとなる

家族関係の問題や、相続財産が分割しづらいものであるなのどの理由で、遺言によって特定の相続人に財産が集中することがあります。しかし例えば不動産オーナーや事業オーナーの相続の場合、正の相続財産の他に債務などの負の相続財産があることが多いのですが、負の相続財産に関しては遺言に記載が無い場合も多いのです。

上記のような場合に、相続債務に関しては、遺言で法定相続分と異なる分割が示されていたとしても、原則として法定相続分に従った割合書く相続人が承継し、返済の義務を負うこととなりました。
遺言によって自由にコントロールすることで、債務を返済する能力の無い相続人に債務を集中させ、その人物を自己破産させ債務の負担を免れるような行為を抑止するためです。
(ただし、相続債権者が相続人の1人に対して、債務の承継を指定相続分に応じてで構わないと承認した場合は、この限りではありません。)


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