医療×AIの組み合わせ、個人が適切なサービスを選ぶことが大事な時代へ


近年、AI(人工頭脳)や機械学習という言葉に大きいな注目が集まっています。実際に製品化やサービス化されているものの大半はAIと言いつつ、旧来からある統計技術を活用したものがほとんどなので、まだAIによる生活の大きな変化は実感できないでしょう。
しかし、その進化と製品化は確実に進んでおり、近いタイミングで我々の生活を含めて社会大きく変えていくだろうことが予想されています。

そしてそうした変革の1つとして、医療分野におけるAIの活用と医療費の削減には大きな期待が抱かれおり、実際に製品化が進んだときに正しいサービス選択をできるかどうかは、個人のクオリティーオブライフ(人生の質)にも大きな影響を与えてきます。
そこで、今回は医療AIとはどのようなものなのか、その概要を見ていきましょう。

医療費の高騰は各国の大きな問題

今、医療の分野で最も大きな問題は医療費の増加と言って良いでしょう。その背景は国によって多少異なりますが、世界中で医療費の増大が社会の根幹を揺るがす大問題となっています。
まず日本の場合、厚生労働省の発表によれば2015年度の時点で国民医療費は42兆3644億円(国民1人辺り約33万3300円)となっています。この金額は前年に比較して3.8%の増加であり、現在は毎年約1兆円ずつ医療費が増加している状況です。
ここまで日本の医療費が増加している理由はシンプルで、原因は高齢化です。高齢者は現役世代に比べ、約4倍の医療費がかかっているという統計もあり、少子高齢化による高齢者の増加が医療費の増加に拍車をかけているのです。今後日本の高齢化は酷さが増すばかりであり、医療費の問題も解決の糸口が見えていません。特に2025年に大きな人口ボリュームを持つ団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりますが、このタイミングで医療費はさらに激増すると予想されています。

なお日本のように高齢化が医療費増加の大きな原因という国は他にも多いのですが、これがアメリカになりますと全く別の要因も絡んできます。アメリカは医療の分野でも規制が緩く自由競争が進んでいるのですが、その結果は健全な競争による医療費の低下とは逆向きに進み、医療機関や医薬品産業の収益重視の姿勢のもと、アメリカは世界一薬価の高い国となってしまいました。
また国民皆保険も未導入のため、病気や怪我をしてしまうと日本では考えられないような莫大な医療費がかかってしまい、それが原因でミドルクラスであっても破産することがあるほどです。
(ちなみに、日本に限らず医師はどこの国でも高給な職業ですが、アメリカの医師は他国に比較しても高給です。およそ870万〜1600万円ほどが先進国の総合系医師の年収の目安ですが、アメリカではそれが約2200万円ほどになるのです。)

この高すぎる医療費と保険制度というテーマはアメリアの大問題であり、2016年の大統領選挙や、つい最近の2018年中間選挙でも大きな争点となりました。

医療AIは医療費の救世主?

AIはその正式名称をArtificial Intelligenceと言いますが、文字通り人工頭脳という意味であり、あたかも人間か思考するがごとく振る舞えるコンピューターとされています。
AIの研究はコンピューターの技術が進んだ1970代頃から研究されていましたが、特に近年は機械学習と呼ばれるコンピューターによる自発的な学習や、ビッグデータの取り扱いが可能となってきたことで、より多くのことができるよになり、そしてより大きな注目を集めるようになってきています。
そして当然、大きな課題を抱えている医療分野でもその応用と活躍が期待され、期待を持てる製品・サービスの開発が進んでいるのです。

例えばアメリカにおける医療保険大手のユナイテッドヘルスグループの子会社オプタムでは、親会社を通して約100人の医師と3000万人の被保険者のデータを分析し、怪我や病気を患ってしまった人に対して、医療費を最低限に抑えた上で最適な治療を提供していくれる医師や医療機関を斡旋するサービスの開発をしています。
またこうした過去のデータから最適な医師をマッチングするAIの他に、チャットによる問診やセンサーや画像データなどを駆使して直接患者を診断するAIの開発も進んでおり、こちらが医療AIの本丸と言えるでしょう。

人間の医師より高い精度を発揮する分野も

現在の画像処理技術やAIの発達は凄まじく、医療AIの分野ではすでに人間の診断を超える精度を発揮するものも出てきました。
例えばイギリスのタートアップのバビロン・ヘルス社が開発した診断用AIは、患者とのチャットでのやり取りで診断を行い、英王立内科医師会やスタンフォード大学等による審査のもと、同じ手法で人間の医師が診断した場合よりも診断の制度が高いという評価を得たのです。
このAIは診断を重ねるごとに学習し、データを蓄積していきますので、今後はますます成長していくことでしょう。

またバビロン・ヘルス社のAIは総合的な診断AIですが、その他に特化型の診断AIの研究も進んでおり、例えばドイツのハイデルベルク大学の研究チームが行った、皮膚ガンの検診を行うAIの研究実験では、研究チームはまず10万点以上もの良性と悪性の腫瘍、ほくろの画像を診断結果とセットにしてAIに学習させました。そしてAIはそれらのデータを分析・学習し、写真を見て皮膚ガンを患っているかどうか判別する診断試験に挑んだのですが、人間の皮膚科医が正しく診断できた割合が86.6%だったのに対して、AIは正しい診断の割合が95%もに達したのです。
癌の治療ではどれだけ早期に発見できるかが重要ですが、その早期発見が難しいために医療費が過剰にかかったり、患者が命を落としてしまう場合たくさんあります。そのためこうした技術にはお金の面でも、より大切な人々の健康の面でも大きな意味があると言えるでしょう。

こうした技術は残念ながらまだ実験段階のものが多く、実用化はもう少しだけ先になるでしょう。しかし本格的に普及しだす頃には我々の医療を大きく変えるはずであり、個人としては正しい医療サービスの選択をできるかが金銭面でも健康面でもクオリティーオブライフを上げる重要なポイントになります。


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