新事業承継税制の実務と留意すべき事項(2019/2/7BAC参加報告前編 )


2019年2月7日に行われたビジネス会計人クラブ(以下BAC)の定例会では、事業承継税制がテーマとして扱われ、中小企業庁事業環境部財務課長の松井拓郎氏による講演や、「新事業承継税制の実務と留意すべき事項」をテーマとした税理士や弁護士の方々よるパネルディスカッションが行われました。

相続tokyoのスタッフも定例会に参加しましたので、当日の模様を2回に渡ってレポートしたいと思います。
まず今回は、前半に行われた「平成31年度中小企業・小規模事業者関係税制改正について」についてお届けします。

平成31年度中小企業・小規模事業者関係税制改正について

当日の定例会の前半は、中小企業庁事業環境部財務課長の松井拓郎氏による「新事業承継税制の実務と留意すべき事項」というテーマの講演が行われました。

事業承継税制は平成20年に制度が創設され、その後粛々と運用が行われてきましたが、使いづらいという意見や、経営者の高齢者による社会的要請の拡大をうけて、平成29年の税制改正にて抜本的に改正が行われ今日に至ります。また平成30年の税制改正では、個人版事業承継税制の創設も行われましたので、そうした変更をうけての事業承継税制の全体像についてや、話題となっている第三者承継、事業承継補助金、また消費税軽減税率対策についても講義が行われました。

全体としてですが、中小企業庁の立場から「事業承継は、経営にタッチするので税金も大事だけど経営の全体図も大事だし、そういう施策を拡大していきたい」というコメントや、「中小企業は大企業と比べて生産性が著しく低いので、代替わりに伴ってその辺りを変えていって欲しい」というコメントが出た事が印象的でした。

以下、主な内容を具体的に見ていきます。

1.事業承継税制について

法人事業承継税制の抜本拡充

近年の事業承継税制を取り巻くトレンドは、法人事業承継税制の抜本拡充と言えます。

平成20年に制度が出来て以降、粛々と運用が続いてきましたが、使いづらいという声も多く、経営者の高齢化による社会的要請が強まったため、平成29年の税制改正大綱で抜本的拡充が行われました。
これまであった、納税猶予となる株式数は全体の3分の2で猶予割合は80%という制限が撤廃され、全株式に掛かる税金を100%猶予できる事になりました。承継時の金銭的な負担はこれでゼロになります。
また1人の先代経営者から1人の後継者への贈与・相続という適用の制限も無くなり、複数の株主から代表者となる後継者(最大3人)への承継まで適用対象が広がります。

また、5年間で平均8割以上の雇用を維持する事という制限も、未達成であっても認定支援機関の指導助言を受ければ構わない事となり、また万が一後継者が会社株式を売却した場合の課税も承継時の株価ではなく、売却時の株価で行われる事となりました。

つまり、リスクが大幅に軽減され、メリットは大きく拡充されたのです。

事業承継税制の実績

平成29年までは年間400件程度だったが、拡充後は年間6,000件に迫り、大幅に増加しています。

個人版事業承継税制の創設

これまで個人事業者の承継対策は課題となっていたので、平成30年末の税制改正大綱で手が加えられました。
10年間限定ですが、多様な事業用資産の承継に掛かる相続税・贈与税が100%猶予されます。
なお、この制度では小規模宅地の特例(事業用の土地最大400㎡の評価額を80%減額)との選択制になります。

統計を見ると、土地だけではなく建物や機械・器具・備品などの償却資産の割合が多い場合もあり、そうした人たちの事業継続支援が目的で創設されました。
特許などの無形償却資産や生物(乳牛や果樹など)なども対象であり、畜産農家や果樹農家などが使えるようになったイメージ

現行の小規模宅地の特例の問題点

個人事業主の承継対策では、元々居住用330㎡の他に、事業用400㎡まで利用可能であった小規模宅地の特例がこれまでのメインでした。そしてこの制度は現在、節税のために悪用されていることが、かなり問題視されており、個人版事業承継税制を立てる代わりに、小規模宅地特例の廃止まで検討されていたそうです。

まず、小規模宅地の特例では事業継続要件がないため、相続後に即売却という事例が目立ち、駆け込みで借金をして土地を購入して土地の減額を受けさらに資産の圧縮を図るような例も目立ちました。
そのため、近年賃貸物件に関しては3年以内の取得を対象外とする見直規定が昨年のうちに定められましたし、事業用の土地もそのように今年定められます。

事業承継時の経営者保証の課題

後継者へも債務の個人保証を求める行為はまだまだあり、その事が承継を阻んでいる例が多く存在します。この問題への対処は今後も力を入れていくとのことでした。

遺留分の民法特例

事業承継の課題の1つに支配権の集約という問題がありますが、先代の財産の大半を自社株屋事業用資産が占めているようなばあい、後継者以外の相続人が遺留分を請求された際の対処が問題になります。
そして今回、個人版事業承継税制の創設に紐付いて、拡充される予定です。特に事前に相続人の合意があれば、承継する相続人が家庭裁判所に手続きして、遺留分の請求権を事前放棄させられることになりました。

2.事業承継施策の全体像について

事業承継支援策の全体像

現状の事業承継支援をめぐる状況ですが、そもそも半分以上の対象企業がまだ後継者も決まっていない状況であり、早急な対策が必要とされています。
そこで気づきの機会の提供や、第三者承継に向けたマッチング支援を政府としても行っていく予定とのことです。そのために、事業承継ガイドラインの整備も行われました。

事業承継支援体制の強化

特に、今後はかかりつけ医的な存在が日頃から気づきを与え、必要に合わせて専門医的な存在へ紹介するモデルを構築したいとのことで、事業承継ネットワークの構築へと繋がっていきますし、士業の方への期待も大きいとのことでした。

全国の事業承継推進会議について

支援機関の連携強化と事業者の意識醸成のために開催され、まず東京で行われましたが今後は地方でも企画されていくそうです。

3.第三者承継

事業引き継ぎ支援センターの概要

後継者探しに難航しがちな事業承継支援にて、後継者探しの支援はとっても重要です。親族内や社内に適切な人物がいなければ外に探すしかなく、マッチング機関の重要性が高まっています。
そして、後継者不在の中小企業などの事業引き継ぎを支援するため、マッチング支援を行う「事業引継支援センター」が全国47都道府県に設置されました。

親族外承継の場合、民間事業者は手数料が高いので、そこそこ以上の規模であれば良いが、小規模は放置されてきた歴史があります。しかし、小規模の企業の引き継ぎニーズは高く、政府としては事業引き継ぎ支援センターを各都道府県に設置したことで、これまで放置されてきた小規模企業の引き継ぎマッチングを支援していきたい考えとのことです。
なお、センターの設置によって実際に相談件数もマッチング件数もともに増えているそうです。

実際のセンターの人の話を聞くと、「所有と経営の分離で、会社を買った人が不労所得で左団扇」というケースは極めて稀で、購入したオーナーが本腰を入れて経営に手を出さないといけない場合が多いそうです。

中小企業の再編・統合等に係る税負担の軽減措置等

例えば建設業だと、代替わりが行われと許認可の関係で半年間入札に参加できなくなり、円滑な承継や第三者への売却における大きな課題となります。そこで昨年の法改正で、認定を受ければ許認可の停止や取り消しが行われないようになりました。

しかし、届け出なく事業承継時には許認可は自動的に承継されるべきという意見もあり、今後も制度は進化していくかもしれないとのことです。

4.事業承継補助金

事業承継補助金

政府としては、事業承継による事業の継続はもちろんのこと、後継者への代替わりの後に生産性を上げてもらうことを望んでいます。
そこで補助金による支援もしており、例えば転業に関わる支援として、古い事業の備品の撤去費用なども補助の対象にするなどしています。

5.消費税軽減税率対策

消費税関連

時間がなく、簡単に流されてしまいましたが、今後は軽減税率も始まるため、税理士や会計士の方には企業の支援にご協力頂きたいとのことでした。


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